2005年3月2日(水)快晴

Uteruga—Eunate--Puente La Reina—Cirauqui—Lorca--Estella  23km
ぐっすり眠って爽快な気分で9時に出発。アスパラガス畑?の360度パノラマ風景の中を、朝の空気に包まれて進む。夢のような空間だ。 歩き続けた先の麦畑の中に、その美しさで「エウナテの宝石」と呼ばれる12世紀のロマネスク教会Santa Maria de Eunateがある。 テンプル騎士団が創設に関係した、巡礼者埋葬の為の小さな八角形の教会。 内部装飾は何もない。 薄いアルバスターを通して差し込む光が、その色を見せる窓だけだ。隣に教会守りの夫婦の家がある。 スタンプを押してもらい、トイレも使わせてもらう。非常に清潔だったのでチップを置く。 こういうスペイン人もいるんだ?と思ったら、ご主人はオランダ人だそうで納得。



その後も葡萄畑の中を歩き続け、美しい橋の町Puente La Reinaに到着。何百年もたっている4階建てくらいの建物が通りの両側に続くため、街の通りが非常に暗い。この暗い石畳の道を歩きながら、建物のどこかに描かれている「黄色の矢印」を探して進む。見落とすと間違った道を進んでしまい、再び引き返さなければならないので真剣に探す。 私は子供の頃に読んでもらった絵本の2つの話を思い出していた。 一つは「ハメルンの笛吹き」の話。村人に約束を反古にされ怒った笛吹きが、村中の子供たちを連れてどこかへ行ってしまうのだが、その中の一人の子供が機転を利かせて道のところどころに目印をつけておく。 この目印のおかげで村人たちが後を追えたという話。 もう一つはどこだったかアラブの国の泥棒の話。盗んだ宝を隠した家が、わからなくならないように扉に目印をつける。 これを知った人が懲らしめようと、町中の家の扉に同じ目印を描いてしまったという話。 そしてなぜか、もう一つ。聖書に出てくる、うっかりしたため花婿と一緒になれない花嫁達の話。 今の私たちにとっては「黄色の矢印」だけが頼りだ。うっかりしていてはいけない。 スペインは今どこも住宅と道路の建設ラッシュだ。 この日は高速道路の工事エリアを長く歩いた。丘を切り崩して道路を作っているので、巡礼ルートがずいぶんと変更になっている。 風で飛びそうなビニルの看板が巡礼者の道を示しており、甚だ心細い。

オリーブ畑の中を歩き続けると、彼方にまるで安野光雅の絵のような村が現れた。 Ciraquiの村だ。シエスタで村全体が眠っている中を、息を潜めて進んでいく。白い石の建物と茶色の屋根を持つ家々。 残念ながらここには肝心のアルベルゲがない。 次のアルベルゲがあるLorcaまで歩くことにする。 村を出るとすぐにRoman Roadが続く。 ローマ時代に造られた、でこぼこの石畳と太鼓橋の脇には糸杉が。 この数百メートルは、時空を超えた静けさと、甘やかな湿気の中に横たわっていた。 今思い出しても、不思議な気持ちになる幻影のような道だ。

太陽が傾き始めたので先を急ぐ。田舎道の巡礼路には街燈がない。やっとたどり着いたLorcaのアルベルゲには、「閉ってます」の張り紙。 「年中無休」とガイドブックには書いてあるではないか! 広場で見つけた張り紙を頼りに、親切そうなお肉屋さんまで行き、宿の相談をする。結局町には宿がないので、次の大きな町Estellaまでバスで行くことになった。 30分遅れてバスが来たときは、既に太陽も落ち始め、あんなに暑かったのが嘘のように凍えていた。 20分程で美しいEstellaに到着。 ドイツ人の若者が5名ほど泊っている、公営アルベルゲにて宿泊。
アルベルゲ:5ユーロ