2005年3月19日(金)曇り

Alto do Poio--- Fonfria--- Biduedo--- Triacastela 12.1km

この日は距離が短いため、3人がゆっくりとそれぞれのペースで歩いた。  私の「象の足首」も、だんだん歩行に余裕が出てきた。  山を下る頃から、Galicia地方の特色が表れ始めた。  空は鉛色で、今にも降り出しそうな雨雲に覆われている。  加えて、どこもかしこも木々と草の緑が色濃く、その色を見ていると息苦しくなりそうだ。  でも深呼吸をすると、この湿度と緑の香りに満ちた空気が、身体全体に行き渡る。  一瞬にして、蘇生するという感じ。  とても濃厚な自然の中に、自分の身体が取り込まれたような感覚。
お昼には、今日の宿泊地 Triacastela に到着。  小さな村の割には、アルベルゲやレストランが数軒ある。  INAHO・マリエラ組はレストランへ。  予算15ユーロの私は、公園でいつものランチ。  村の道路では、本格的な自転車レースが開催されている。  食後の散歩をしつつ、今晩のアルベルゲを品定め。  近代的なアルベルゲと古い農家を改造したアルベルゲ、どちらにするか迷う。
この近辺を時間に任せて2周していると、農家アルベルゲのドアが開いて、中から大音量の美しいクラッシック音楽が流れてきた。  次いで素敵なおじ様がカーペットを持って現れ、玄関先でパンパン!とたたき始めた。  おじ様があまりにも素敵なので、フラフラと近づき「あの〜、今晩女性3名泊まれますか?一人いくらですか?」と聞く。  とても感じの良いおじ様だ。  雰囲気も顔つきも服装もスペイン語も、地元民ではなさそうだ。(英国俳優のピーター・オトゥールそっくりだったような気がする。)
INAHO・マリエラ組が戻ってきたので、これこれしかじかと説明し、農家アルベルゲに決める。  建物は古い農家だが、内部にはアンティークの金糸銀糸の祭服や天使の像がいたる所に飾られている。  コンピュータやコーヒーの自動販売機も、何気なく同居しており素敵な雰囲気だ。
夕方から村のIglesia de Santiagoのごミサに行く。  しかし、ミサの時刻になっても神父様が来ない。  鐘も鳴らない。  周囲のお墓を散歩しつつ、待つこと20分。  村人のおばさんから何か言われつつ、神父様がやってきた。  彼が入ってすぐに、ガン!ガン!ガン!と鐘がなって、あっという間にミサが始まった。  会衆はINAHOさんと私の2人だけ。  その上、「巡礼者の特別のお祈り」のため1名は祭壇にと言われ、私が上がる。  結局、会衆はINAHOさんだけ。  私達2人のための、ごミサとなった。  巡礼者のお祈りは各国語揃っており、日本語版を読んだ。
ごミサ終了後、神父様に呼ばれて香部屋に入れて頂く。  想像に反して、いろいろなものが所かまわず置かれており、まるでサーカスの楽屋のよう。  壁には、若かりし頃の神父様の大きな写真が飾られている。  私が何気なく「神父様ですか?  なんて素敵!」  するとニッコリ笑って、飾られている写真の縮小版(プロマイド)を机から取り出し、裏にサインをして下さった。  こうして、ここを訪れた巡礼者を通して、世界中に彼のプロマイドが散らばっていると思われる。  愉快な神父様だった。
 
アルベルゲでのディナーは、素敵なオーナーとその友人が作ってくれた「冷蔵庫にあったもの全てを煮込んで、いろんなスパイスを入れた」 おいしい無国籍料理。
そしておいしいチーズと、結構年代物のワインを頂いた。  特別に提供されたこのディナー。  理由は「君達が、今年初めてのお客さんだから。  今年の春は、今日アルベルゲを開けたんだよ!」
なんてラッキー!  私のヤマ勘は、良い線を行っている。  スペインの歴史をたくさん講義していただき、眠くなって10時に就寝。


アルベルゲ:7ユーロ